こんにちは、土地家屋調査士のはるです。
今回は不動産登記申請について、『調査士報告方式』についてご紹介します。
実務者の方なら最近よく聞くワードだと思います。
紙申請や半ライン申請をしている方はこの機会に、調査士報告方式(完全オンライン)に切り替えてみてはいかがでしょうか。
結論として、調査士報告方式はメリットしかありません!
この記事では調査士報告方式について具体的な手順をシンプルに解説していきます。
まずは調査士報告方式とは何か、ということから説明していきますね。
調査士報告方式とは
令和元年11月11日から調査士報告方式が運用開始となりました。
調査士報告方式は 令和元年10月7日付けで出された法務省民二第187号の依命通知に記載があります。
内容が小難しいため、今回は分かりやすく出来るだけシンプルに説明を行います。
調査士報告方式を簡単に説明するとこんな感じです。
「土地家屋調査士が申請代理人となり表示登記のオンライン申請をするときに、委任状を含め、紙の添付書類のすべてを申請代理人である土地家屋調査士自身がスキャナでPDFファイルに変換し、また調査報告書と図面を電子ファイルで作成したうえで、申請情報にすべてを添付して送信する方式」 です。
調査士報告方式では原則、原本の提示は求められません。
半ライン申請(オンライン特例方式)のときは登記官へ原本提示は必須でした。
当たり前ですが、調査士が原本を確認し、PDFに変換する必要があります。
ここまでの内容だけでも画期的な申請方式だと分かりますよね。
調査士報告方式のメリット
正直、メリットしかないです。
特に大きなメリットは以下の3点でしょうか。
・法務局に原本の提供(提示)や、郵送をする必要がない
・原本還付、提示が不要
・補正がある場合、すべてオンラインで対応
順番に解説します。
法務局に原本の提供(提示)や、郵送をする必要がない
例えば、建物表題登記を半ライン申請(オンライン特例方式)の時は『委任状』『引渡証明書』『住民票』『建築確認済証』等の原本を法務局へ持参したり、郵送していたと思います。
これって手間ですよね。
また、調査士報告方式では原本還付処理や原本提供(提示)の作業がありません。
オンライン申請したら終了です。
原本は手元にある状態です。
補正がある場合、すべてオンラインで対応
例えば、仮に『委任状』に不備があった場合も、申請人に訂正してもらい、再度PDFにしてオンラインで補正を行います。
半ライン申請(オンライン特例方式)では法務局へ行き、『委任状』を補正する方法でした。
これは非常に不便でした。
調査士報告方式のデメリット
特にありません。
強いて言うなら・・・
・パソコンが必要
・スキャナが必要
・電子証明、電子証明書の利用に費用がかかる
・登記完了証は法務局の発行ではなく、自身でPDFを印刷する必要がある
調査士報告方式の要件
・紙の添付書類(委任状等)をPDFにし、調査士が自身の電子署名をして添付する
・調査報告書に『PDFファイルは調査士が内容を確認して作成した』旨を記載する
・権利の消滅や変更に関する書類や地役権図面が添付されていない申請又は嘱託であること
・申請書に『調査士報告方式により原本の提示を省略する』旨を記載すること
・添付されたPDFファイルが不鮮明でないこと
上の要件を1つでも欠く場合は調査士報告方式とはみなされず、半ライン申請(オンライン特例方式)となります。
調査士報告方式の具体的な手順
今回は半ライン申請(オンライン特例方式)をしている方が調査士報告方式に変更する際の具体的な手順をご紹介します。
1.調査報告書の最後の項目「10 補足・特記事項」に 『PDFファイルは調査士が内容を確認して作成した』旨を記載
2.申請情報の 「その他事項」に 「調査士報告方式により原本提示省略」と記載
3.申請情報の「登記完了証の交付方法」は 「オンラインによる交付を希望する」を選択
4.紙の添付書類(委任状等)をすべてPDFにし、調査士が自身の電子署名をして申請情報に添付
step
1調査報告書の最後の項目「10 補足・特記事項」に 『PDFファイルは調査士が内容を確認して作成した』旨を記載
調査報告書の最後の項目「10 補足・特記事項」に
「添付した電磁的記録については、当職において添付情報が記載された書面を確認した上で、当該書面をスキャナにより読み取って作成した電磁的記録である。」
と入力しておけば大丈夫です。
ご存知とは思いますが、よく使うフレーズは『入力補助』から『登録』を行い次回以降は簡単に入力することができます。
step
2申請情報の 「その他事項」に 「調査士報告方式により原本提示省略」と記載
一般的に使用されている申請用総合ソフトで説明します。
申請情報の「その他事項」に、
「調査士報告方式により原本提示省略」
と入力しておけば大丈夫です。
step
3申請情報の「登記完了証の交付方法」は 「オンラインによる交付を希望する」を選択
申請情報の「登記完了証の交付方法」に、
「オンラインによる交付を希望する」
を選択します。
step
4紙の添付書類(委任状等)をすべてPDFにし、土地家屋調査士が自身の電子署名をして申請情報に添付
例えば、建物表題登記の場合、
添付情報としては通常は『委任状』、『工事完了引渡証明書』、『工事施工者の印鑑証明書』、『建築確認済証(申請書・図面等含む)』等が必要ですよね。
これらをすべてスキャナにより、PDFにします。
そして、このPDFに申請代理人の土地家屋調査士自身の電子署名をし、申請情報に添付します。
調査士報告方式の注意事項
注意事項を4つ紹介します。
・PDFにする際の3つの注意事項
・原本の保管について
・登録免許税の納付について
・登記完了証について
PDFにする際の3つの注意事項
1.PDFにする際はデータが鮮明であるか必ず確認しましょう。
PDFが不鮮明の場合は補正の対象となります。
申請前に必ず確認するクセをつけましょう。
特に、捺印のある書類では陰影が鮮明か確認しておきましょう。
スキャナ解像度の目安は「300dpi」が良いと思います。
必要に応じて濃淡を調整しましょう。
2.添付書類は原寸のままスキャナで読み取る
原寸ではない場合は補正の対象となります。
これも必ず守ってください。
3.A3まではそのままのサイズで、A3を超えるサイズの図面などは分割してスキャンする
これも守らないと補正の対象となります。
昔の建築図面や、一部の役所の道路図面などはA3を超えるサイズのものが珍しくありません。
重要な個所はできるだけ分割されないように工夫してスキャンしてください。
原本の保管について
登記申請中、原本は事務所内に保管されていると思います。
登記審査中、登記官が原本の提示を求めることもあり得ます。
その際に、すぐ対応できるように原本を事務所に保管しておきましょう。
また、登記完了後は原本還付が可能な書類(住民票等)は依頼主に返却をするケースが多いと思います。
原本還付可能な書類は登記完了後に依頼主に返却して問題ないと思います。
一方、半ライン申請(オンライン特例方式)では還付不可能な書類(委任状、工事完了引渡証明書等)は法務局に保管されますが、調査士報告方式では調査士のもとに残されます。
これについては調査士会からも未だに指示がないので今後どうなるか分かりませんが、複数年間は調査士により厳重に保管すべきと考えます。
登録免許税の納付について
調査士報告方式では電子納付となります。
電子納付以外は認められません。
納付時期については、登記官の調査が終わって登記官から通知があった後です。
ただし、申請書を送信して直ぐ電子納付しても大丈夫です。
通知後に納付する場合、通知の日を入れて3日以内(未開庁日を除く)に電子納付をする必要があります。
登記完了証について
調査士報告方式では登記完了証は「オンラインによる交付」しか認められていません。
登記完了証を法務局による発行を希望する場合は調査士報告方式では申請できないということです。
最近は、多くの調査士事務所、調査士法人がこの調査士報告方式による申請に切り替えています。
ですので特に気にするところではないと思います。
法令書式センターから以下のものが購入できます。
これらを使用することで登記完了証や登記識別情報が「オンラインによる交付」でも安心です。
ちなみに、合筆登記等で登記識別情報を法務局の窓口で受領することは可能です!
その際は申請情報の『登記識別情報通知希望の有無』を『登記所での交付を希望する』とすれば大丈夫です!
もちろん、登記識別情報のオンライン交付も可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は調査士報告方式(完全オンライン申請)について解説してきました。
メリットしか考えられない調査士報告方式です。
大きな3つのメリット
・法務局に原本の提出(提示)や、郵送をする必要がない
・原本還付、提示が不要
・補正がある場合、すべてオンラインで対応
実務をされている方は少しでも効率が良い方法を探されているかと思います。
この記事を参考にしていただき、
今後の業務改善、業務効率化、生産性向上にお役立ていただけたら幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。